ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

人生の搾め滓

 むかし、田辺聖子さんの『不機嫌な恋人』という、平安宮廷を舞台にした恋愛小説を読んだ。作中、「恋のてだれ」として名高い、宮中女房の小侍従が、鏡の中の自分を見て、厳しい目で観察した上で、そこそこ美しいけれども、たしか「青春の搾め滓」などと辛辣に評すシーンがあった。そこには、もとが美人で、同性にも男性にも美しいと長く賞賛されてきて、しかし、花はいずれ盛りを過ぎて凋落へと向かうものだと弁えた女性の視線がある。

 青春どころか、朱の夏も過ぎ、白い秋を迎えようとしている年頃のわたしが鏡の中に認めるのは、うすぼんやりとした肌色の、幼顔のまま老いを迎えた自分の顔である。朝、顔を洗って、化粧水を染ませた4枚重ねのコットンで顔を拭く。家事をしているうちに汗になるからまた顔を洗って、手近に化粧水があったらまたコットンで顔を拭く。これを一日に何度も繰り返すだけのスキンケアしか、夏場はしていなかった。

クリームというよりは、ジェルかも。

 冬の「越冬クリーム」は、黄色いジャーらしい。30年ほど前から全国の生活協同組合で扱いのある「水の彩」を彷彿とさせる感じで、110gで税込1320円。全身に使えるけれども顔に塗ってもよいらしいので、これからせめて寝る前は、顔を保護しておこう。いまでこそ、気温が一日のうちに27℃と38℃の間を上下しているけれども、いずれまた凍り付くような明け暮れの季節が巡ってくるのだから。