市川実日子が、ネコを貸し出す仕事の傍ら、生計を立てるために手がけている、少なくとももうひとつの仕事は実際には何だったのか、まあ、わかってもわからなくてもいい。
本作には、昨年のNHK大河ドラマで石田三成を演じた田中圭が出演している。田中は、また、年初のNHKプレミアの深夜ドラマ『徒歩7分』で、田中麗奈と共演していた。三成のときの、黒田一門の、それこそ黒装束と対蹠的な白い装束を着こなして、ふんぞりかえっている小憎らしい若造ではなく、引きこもりの麗奈にさえばしばし叱られて小さくなって明太ごはんを掻き込んでいる気弱な「若者」ぶりだった。
田中の話から、市川実日子について戻ると、マガジンハウスのクウネルなどでずいぶんお若いころから洋服のモデルさんとして見慣れてきた女優さんではあるし、NHK大河ドラマ『八重の桜』では、玉山鉄二の山川浩の姉である山川双葉も演じた。本作は、その彼女が、安定した演技力で、祖母の残した古い一軒家に住み、リヤカーにネコを載せて多摩川沿いを流して歩くという、昔ながらのビジネスに励む働く女性を好演したよい作品である。