ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

途中で寝てしまうこともあり申し訳ない

 京極夏彦さん原作の『魍魎の匣』『姑獲鳥の夏』をWOWOWオンラインで観ていた。『姑獲鳥の夏』が2005年公開で、『魍魎の匣』はその後だけど、ちょっと映画館に足を運んでいる場合じゃない時期だったこともあり、両方未視聴だった。京極夏彦さんの作品は、原作のノベルスも厚手で、きっと博覧強記な京極堂はじめとする登場人物が博物学的な知識を縷々開陳する展開なんだろうなと思って、こちらも手を出さずにいた。

 どちらも、約20年前の、堤真一さんや田中麗奈さんたちが出てくる。才気煥発で、しかも沈着冷静な堤真一さんは、まだ三十代だったはずだ。その妹役の田中麗奈さんも、元気でよく跳ねる。

 田中麗奈さんは、2016年の映画『幼な子われらに生まれ』で、ふたりの幼い娘を連れて、前妻のもとに実の娘がひとりある男性と再婚する母親を演じている。

 

 今回、この作品を再視聴して、田中麗奈さんの最初の夫を演じた宮藤官九郎さんの、露悪的な、でも、自分も周囲もできれば傷つけたくないけど、そもそも俺はそういうのに向いていない人間だし、という感じの演技にまた痺れた。浅野忠信さん演じる、田中麗奈さんのふたりめの夫である主人公も、家庭で、職場で、実子の心配で、けっこうぎりぎりの内破寸前の危うさである。その彼が、妻の連れ子の上の娘に会ってくださいと、要求されるままに妻の前の夫に10万円の入った封筒を差し出すシーン。年頃になった自分の子が実の父親に会いたいというけれども自分は会いたくない、でも、趣味のギャンブルに金が掛かるので、前の妻の現在の夫であるあなたが10万円払うならば、厭だけど上の娘に会いますよ、と宮藤官九郎さん演じる前夫から持ちかけたのだ。

 浅野忠信さんは、実の娘を育ててくれた前妻の夫に向かって、この子のお父さんでいてくれて、愛情をもって育ててくださって、ほんとうにありがとうございましたと頭を下げる。一方、宮藤官九郎さんは、10万円くれるなら、会いたくもない実の娘だけど、会うのは吝かではありませんよと、実に「屑」らしい発言をする。

 

 

 その「屑」が、娘との待ち合わせ場所に一応きちんとした恰好をして、おみやげのひとつも抱えて現れたら、評価値がぐぐっと上がるの、いわゆる不良の善行めいていて、ふだんの行いが悪い人ってちょっと得してますかもしかして。