このあたりは東京の東端、それも東京湾がすぐ目の前で埋立地の住宅地だ。そこから東京の昔の下町といわれる、江東の北のほう、墨田、台東に抜けるエリアを走るバスにしばしば乗る。乗って気が付くのは、60代後半よりお年を召した女性が、総じて、とはいわないまでも、だいたい小柄であることだ。それとなくほぼ満員のバスの車内を見渡せば、身長は150センチより低く、体重も40キロ未満と見える年配の女性が多い。わたしの親戚もそのくらいの年頃の女性はあまり大きくはない。身長で165センチを超える人は、3人くらい。多くは、155センチと160センチの間ぐらいだろう。体重は、50キロくらい。つまり、わたしの親戚のおばさんの多くは、バスの乗客の初老の女性の大方よりは一回りは大きい。
その小さな女のひとたちを眺めながら、荒れた繊手でもって大根を洗い、小銭を扱い、こどもを育て上げて孫を抱えて、送ってきた幾つもの春秋を思う。2年前のCOVID-19大流行からこのかた、そのおばあさんたちの知るも知らぬも巻き込んでのバスの中での大声のおしゃべりが消えた。ちょっと気の毒だ。