ぴょん記

きょうからしばらく雨降る日々

また手紙の代筆でした

 ここ数年、受け取る先方がわたしが代筆で書いたとあらかじめ了承しているような書簡をしたためることが増えた。わたしによる代筆の手紙は、きちんとした便せんに万年筆で内容を綴り、頑丈な白封筒にボールペンで宛名と差出人を記入した、形式的にはわりとちゃんとした代物だけど、書き字が水茎滴るものの対極にあり、また、やっとのことで用件を伝えてあとは息も絶え絶えなので、およそ愛嬌というものがない。つまりは、受け取った方が、しぜん嬉しくなるというものではない。よくないほうの意味で、「無骨な」と言われることがしばしば。

 きょうも昼過ぎに代筆を請け負って、一眠りしたあとでえいやっと書き上げた。井上ひさしに『十二人の手紙』という作品があり、もとより手紙の文例集ではなく、12人それぞれが人生のある日に書いた手紙がそれだけでひとつの人間模様の投影になるという小説で、夫もわたしも若いときに、たぶん十代のころにそれを読んでいるので、手紙の代筆をするときはよくそれを引き合いに出す。

 わたしの代筆は、冒頭にも書いたように、名義人ではなくわたしが書いていることを受け取る方がよくご存じなので、純粋な代筆ではない。わたしが、名義人の伝えたいことをとりあえずひとくさり歌って申し上げますどうぞお笑いください、という遜った気分で万年筆でぼちぼち書いていく。完全に自分を隠すことなどどうしてできようか。

 

 いま読むと、きっと時代性とずれを感じると思う。