『リトル・フォレスト』を読んだ。岩手県奥州市衣川区大森という厳しい自然と豊かな恵みに彩られた一帯が舞台となっている。主人公の若い娘は、ふたりで暮らしていた母親にあるとき失踪される。母親が彼女自身のために家を出て行ったのか、それとも、娘の成長を促すために棲み家を明け渡したのか、にわかには判断が付かなかったが、最後まで読んで、おそらく前者だったのだと思った。同じ作者の『魔女』の下巻で、「石」を身体にとりこんで……の魔女とはいなくなった理由の性質は大きく異なるけれど、未成熟な女の子がひとり残されたことだけは同じだ。ともあれ、このお母さんのように、完璧にはほど遠い「魔女」もいてよい。