2011年11月に発売された、このクウネル53号は、韓国特集。ポシャギという、繊細な一種のパッチワークを知ったのもこの号だったのではないか。工芸に関するページにも増してこの号で静かな存在感を放っていたのは、韓国の地方都市に住む、ふつうの家庭の主婦の生活の記事だ。主婦のひとりは、とにかく台所の床を雑巾を掛けてきれいにする。雑巾掛けをしていない時間の殆どは、調理と、その下拵えに費やして、三度三度、家族の(主として、夫と成人した息子たちの)ために、温かく、皿数の豊かな食事を用意する。おもえば苛酷な日課なのだが、グラビアの中の主婦たちは、誰も皆、笑顔を湛えている。いま現在はどうであるかは知らず、ともかく10年弱前の韓国の台所には、笑顔と手まめな仕事がたしかにあった。
ごはんを炊く、食事を調えるという作業が、もっともっと面白いものになれば、それに関わる人数も増えるのかしら。