ぴょん記

食べる、遊ぶ、学ぶ。

『そこのみにて光輝く』

 舞台は、函館の海辺、それも寂れた辺りである。冒頭、綾野剛が、下穿き一枚で畳の上で微睡んでいる。それを爪先からじっくりと見せてカメラは上半身に移っていく。この俳優の放恣なさまは、謹厳実直な松平容保を演じた『八重の桜』においても隠れようはなかった。その彼が、たばこ、ビール、酩酊、泥酔ののちの眠りを、つまりは無為な時間を果てしなく繰り返している。それは、なぜか、というのは、そのうちわかる。

 その綾野剛の視界にいきなり飛び込んできた菅田将暉。真っ赤な半パンジャージで自転車を漕いで、人なつこいけれど、そうみえて傷害罪で服役して、仮釈放中の身である。菅田将暉の姉が、池脇千鶴。千鶴は、烏賊の加工工場でも、飲み屋の奥での売春でも、場所を選ばずとにかく稼がなければならない。彼女の稼ぎに、寝たきりの父親、その介護をする母親、弟の菅田将暉、そして自分の四人家族の生存が掛かっている。

 挫折を味わった、けれども他人から必要とされている綾野剛と、ばかにされている足元をみられていると知りつつ、ときに頭を下げときに膝を屈して、金のために従わねばならない池脇千鶴。恋がはじまって、でもうまくいかない予感はどちらにもあって、戸惑いながら見つめ合っているうちに、菅田将暉が。