現代の韓国の地方都市、その穏やかな風景の中で事件は起こる。同じ日に、女子高校生ふたりが行方を絶つ。いつもグループの溜まり場とされていた倉庫からは合計数リットルのふたりの人間の血液が発見され、被害者ふたりは既に死亡しているのではないかと考えられて、死体のない殺人被疑事件2件として捜査が行われる。
その結果、土地のいちばんの資産家の一人息子で成績優秀、皆からも慕われるJくんがふたりの女子高生を殺害し、しかも遺体を隠匿したまま黙秘を続ける、殺人、死体遺棄被告事件の被告人として裁判に掛けられ、ちょうど十年間、刑務所で服役する。
収監当時19歳だったJくんは、出所時29歳。父親は亡くなり、母親は故郷の片隅で、「わたしが逃げるわけにはいかない」と、殺人を犯した者の母として冷遇に耐える暮らしを送っていた。
そこからどんどん地域社会の綻びが、警察署、大病院、地区選出の国会議員を巻き込んであらわになる展開で、一旦、スティグマを負わせて排除した者に対して、もとの集団はとことん残酷になるという、ほぼ救いのないストーリーですが、しばらく孤軍奮闘していたJくんに、途中から彼の無実を信じることにした刑事さんという心強いバディができるのと、医学部4年生を休学中のかしこいお嬢さんがなぜか村にいて何かと力になってくれたのと、そのへんの人間模様は見所ありです。