ぴょん記

食べる、遊ぶ、学ぶ。

『運び屋』

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 90歳の翁が、その経歴の白さを見込まれて、複数回、コカイン密売組織のブツの運搬人を務めた、という実話に基づく映画。朝鮮戦争の復員軍人である彼は、かつてデイリリーという百合の栽培者として仕事熱心な園芸家であったが、その栽培者のコミュニティや在郷軍人会のおつきあいに熱心なあまり、妻に去られ、娘に嫌われ、そして、やがて事業にも失敗して自宅は差押えを受けていた。

 そんなとき、彼は裏世界の男たちと関わりをもつ。まとまった金を報酬として支払うと約束した連中が次々に老人に押しつけて運ばせるのは、大量のコカインで、DEAの局員らが躍起になって行方を追う、まとまった単位のブツだった。回を追うごとに、運ぶブツの重さは増し、孫娘の結婚パーティー、自宅の抵当を抜いたり、火事に遭った在郷軍人会のクラブを修復したり、そういうことが可能になっていく。老人は、人の喜ぶ顔を見るのが何よりも好きで、だから外面よく仲間に一目置かれていたけれど、蔑ろにされたと感じた家族らは彼を許すことができない。ある日の「仕事」中、かつての妻が重態であると娘から連絡がくる。男は、組織のきまりを破って妻のもとへ駆けつけるか、それとも約束通りにブツを先方に届けるかの選択を迫られる。

 作中、孫娘の結婚式のあとのバーでの2次会、在郷軍人会のお祝いパーティー、メキシコのボスの屋敷での乱痴気騒ぎと、90歳の老人にはおよそ釣り合わない派手な宴が繰り広げられる。でも、どのパーティーでも、彼は、十分に楽しむ。人の狡さや、自分の弱さを理解した上で、ドラッグの取引から得られる利益の割り前である自分の報酬が人の役に立っていることに喜びも感じている。家族を大切にすべきだった、という述懐もたしかにあったし、それは監督の伝えたいことのひとつだったのだろうけど、汚れた金でかわいい孫娘の結婚を祝うことはできないといった、古風な人間が抱きがちな廉潔さは消え失せていた。金は金、危ない橋を渡って稼いだ金を好きに使うことにさほどの罪悪感は覚えないという乾いた感情の処理だ。とりあえず、途中までは、そう。法を超えた登場人物の内面の評価に際して、これをどう思うかは、映画を観る者に許された自由の範疇。

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5か月ぶりにアルコール飲んでしまった