この作品は青空文庫に入っているので、わたしは、iPadアプリ「ソラリ」で読んだ。きっかけは、Disney+で独占配信される、宮藤官九郎さん企画・監督・脚本で池松壮亮さん主演の連続ドラマ『季節のない街』が、舞台を「ナニから12年」が経過した仮設住宅に移して作られているという告知を読んだことだ。
昭和37年くらいの都内のあまり環境のよくない場所にその「街」は、ある。あとがきで作者の山本周五郎自身が書いているように、そこの長屋に住まうのは、いずれも極貧の世帯で、現代ならばちょっと新聞の連載小説にふさわしくないような街全体や個人それぞれの風紀の乱れも激しい。貧しさが乱れを呼び込むのか、それとも、乱れゆえに結果として貧しさが招き寄せられるのか、それはわからない。もちろん例外はあるものの、男性はだいたいお酒にだらしなく、女性は束の間の快楽のためには思い切りがよすぎる。電車の通る大通りを幾つか離れただけなのに、その長屋のある「街」には、高度経済成長やオリンピック景気のお零れは、なかなかやってこない。
かなり絶望的な話からなるオムニバスなので、強くお奨めはしない。
はやくAmazonかWOWOWオンデマンドに流れてこないかな。