ぴょん記

上古文学、外国語、数学、調理、編みもの、縫いもの、競争法

Geschichte

うさぎの年越し

大晦日の午後から、山田の一家と一緒に有馬温泉の旅館で過ごしたから、元旦の昼過ぎにおうちに戻ったときはなんとなく抜き足差し足するような気分だった。ぼく、それだけ殊勝な心持ちでおったのに、帰って玄関がらりと開けた瞬間に、おかあちゃんがぼくの襟…

因幡のおつかい

塗りの筥に清げに薄様など敷き散らし、その上に搗きたての餅を手早く丸めたものをわたしの上司である筑紫どのは厨女に命じて用意させた。本来ならばこの月もわたしが伺うべきところじゃが、お方さまが産み月に入られ、お側を離れることは憚られるゆえ、因幡…

妻であることの意味

たとえば、世に認められた妻たる人がいる男性が、旬日に一度、母でも姉妹でもない妻とは別の女性のもとに泊まって朝になればまた妻のいる家に帰るという暮らしを何十年にもわたって続けていたとき、その妻とは別の女性は、彼にとって、次妻なり妾なり、とに…

あの日のアバンチュール

数日来、風邪引きが出たり自分もおよそ活発な気分でなかったりしておとなしくしていた。そういうときは眠っている間にこれは夢だと意識して過ごす時を与えられたり、反対に覚めていても微睡みの中に在るような心地になったりする。むかし、始終、そのような…